多くの人にとって聞き慣れないかもしれない「七十二候」という言葉ですが、これはどういったものなのでしょうか。一般的に季節は春、夏、秋、冬の四季で分けられますが、それに加えて、立春や立夏などの表現も存在します。
「今日は立春で、暦上では春が始まります」
といったフレーズをニュースで耳にしたことがあるかもしれません。
これらは二十四節気の一部で、一年を24に分ける方法です。そして、これをさらに細かく5日ごとに区切ったのが七十二候になります。
今回はこの七十二候に焦点を当て、その一覧や詳細について掘り下げてみました。
七十二候とは
「七十二候」とは、約5日ごとに分けられた、二十四節気の各節気をさらに3分割した期間を指します。
「しちじゅうにこう」と読まれるこのシステムは、もともと古代中国から始まり、飛鳥時代に日本に伝わりました。日本では、その独自の気候や風土に合わせ、七十二候は徐々に独自の変化を遂げてきました。これは、四季の変化をより細かく、繊細に捉える日本人の工夫の表れと言えます。
では、なぜこれほど細かい区分が生まれたのでしょうか。
その背景には、太陰暦と太陽暦の違いが関係しています。太陰暦は月の周期を基にしているため、一年は約355日ですが、太陽暦では約365日です。この約10日の差が、年月を通じてズレを生じさせていました。
農業中心の社会では、この季節のズレが農作業や天気予測に大きな影響を与えていました。そこで、季節の変化をより正確に捉えるために、七十二候が生まれたのです。
日本に伝わった後、七十二候は日本の自然や文化に合わせて名前が変更され、多くの自然の変化を表しています。例えば、「桜始開」は春の始まりを告げる桜の開花を象徴しています。
七十二候は、四季の移り変わりを詩的に伝える日本の文化的遺産と言えるでしょう。現代の私たちも、この古の知恵を通じて季節の美しさを新しい視点で感じることができます。
自然のリズムに耳を傾け、季節の息吹を感じることは、私たちの生活に豊かな時間をもたらすかもしれません。
七十二候と二十四節気の関係
全ての二十四節気と七十二候をリストアップすることは可能ですが、その量が多いため、完全な一覧をここに記載するのは難しいです。しかし、代わりに、各節気の始まりとそれに対応する七十二候の一部を例示することはできます。それぞれの節気には3つの候があり、年間を通してこれらが繰り返されます。
こちらが二十四節気とそれに対応する七十二候の一覧です。
立春
立春の期間は、冬の終わりと春の始まりを象徴する季節です。
- 東風解凍(とうふうこおりをとく)
- 読み方:とうふうこおりをとく
- 時期:立春の始め頃(2月4日頃〜)
- 意味:東から吹く風が冬の氷を溶かし始める時期を示します。冬から春への移行を象徴しています。
- 黄鶯睆睆(こうおうけんかんす)
- 読み方:こうおうけんかんす
- 時期:立春の中頃(2月9日頃〜)
- 意味:ウグイスが鳴き始める時期を表します。春の訪れを告げる、鳥の声が象徴的です。
- 魚上氷(うおこおりにのぼる)
- 読み方:うおこおりにのぼる
- 時期:立春の終わり頃(2月14日頃〜)
- 意味:凍っていた川や湖の氷が溶け始め、魚が氷上に現れる時期を指します。冬の終わりと春の活動の始まりを示しています。
雨水
雨水の期間は、自然が徐々に冬から春へと移行する過程を象徴しており、自然界の変化を感じるのに適した時期です。
- 土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)
- 読み方:つちのしょううるおいおこる
- 時期:雨水の始め頃(2月19日頃〜)
- 意味:雨が降り、土が潤い始める時期を示します。春の訪れとともに自然界が活動を始める合図です。
- 霞始靆(かすみはじめてたなびく)
- 読み方:かすみはじめてたなびく
- 時期:雨水の中頃(2月24日頃〜)
- 意味:空気が湿り、霞が立ち込めるようになる時期を表します。春の訪れを感じさせる穏やかな風景です。
- 草木萌動(そうもくきざしうごく)
- 読み方:そうもくきざしうごく
- 時期:雨水の終わり頃(3月1日頃〜)
- 意味:草木が芽吹き始める時期を指します。自然の生命が目覚め、春の到来を感じさせる時期です。
啓蟄
日本独特の季節の移り変わりを詳細に描写し、自然界の微妙な変化を捉えています。
- 蟄虫啓戸(ちっちゅうこをひらく)
- 読み方:ちっちゅうこをひらく
- 意味:冬眠していた虫たちが土の中から出てくる時期を示します。自然界の生命が目覚める合図とも言えます。
- 桃始笑(ももはじめてわらう)
- 読み方:ももはじめてわらう
- 意味:桃の花が咲き始める様子を表します。春の訪れを告げる美しい景色が広がることを示しています。
- 菜虫化蝶(なむしちょうとなる)
- 読み方:なむしちょうとなる
- 意味:アゲハチョウなどの幼虫が成虫へと変態する時期を指します。自然界の成長と変化を象徴しています。
春分
春分の期間は、自然が完全に春の訪れを迎え、生命が活発に動き始める時期を示しています。自然のリズムに合わせた生活を感じるのに適した季節です。
- 雀始巣(すずめはじめてすくう)
- 読み方:すずめはじめてすくう
- 時期:春分の始め頃(3月21日頃〜)
- 意味:スズメが巣作りを始める時期を示します。春の到来と共に新しい生命の誕生を準備する自然の営みを表しています。
- 桜始開(さくらはじめてひらく)
- 読み方:さくらはじめてひらく
- 時期:春分の中頃(3月26日頃〜)
- 意味:桜の花が開花し始める時期を表します。日本の春を象徴する美しい景色が広がることを示しています。
- 雷乃発声(らいすなわちこえをはっす)
- 読み方:らいすなわちこえをはっす
- 時期:春分の終わり頃(3月31日頃〜)
- 意味:春の雷が鳴り始める時期を指します。自然界の活動が活発になる春の力強さを感じさせる象徴です。
清明
清明の期間は、春の暖かさが増し、自然がより活発になる季節の変わり目を示しています。
- 玄鳥至(げんちょういたる)
- 読み方:げんちょういたる
- 時期:清明の始め頃(4月5日頃〜)
- 意味:ツバメが渡ってくる時期を示します。春が深まり、温かな気候が訪れることを表しています。
- 鴻雁北(こうがんきたす)
- 読み方:こうがんきたす
- 時期:清明の中頃(4月10日頃〜)
- 意味:ガンが北に向かって渡っていく時期を指します。季節の移動を象徴し、春の終わりと初夏の始まりを感じさせます。
- 虹始見(にじはじめてあらわる)
- 読み方:にじはじめてあらわる
- 時期:清明の終わり頃(4月15日頃〜)
- 意味:虹が見られ始める時期を表します。春の天気の変わりやすさと、春らしい鮮やかな色彩の世界を示しています。
穀雨
穀雨の期間は、春の終わりと初夏の始まりを告げる重要な時期であり、自然界の成長と農作物の生育にとって大切な季節です。
- 葭始生(よしはじめてしょうず)
- 読み方:よしはじめてしょうず
- 時期:穀雨の始め頃(4月20日頃〜)
- 意味:ヨシや他の水辺の植物が生育を始める時期を指します。自然の生命が豊かに育ち始める季節の変わり目を示しています。
- 霜止出苗(しもやんでなえいず)
- 読み方:しもやんでなえいず
- 時期:穀雨の中頃(4月25日頃〜)
- 意味:霜が終わり、稲の苗が植えられる時期を表します。農作業が本格化し、新たな作物の季節が始まることを示しています。
- 牡丹華(ぼたんはなさく)
- 読み方:ぼたんはなさく
- 時期:穀雨の終わり頃(4月30日頃〜)
- 意味:牡丹の花が咲き始める時期を示します。春の終わりを飾る華やかな花々が自然界に彩りを添えます。
立夏
立夏の期間は、春から初夏への移行を感じさせる時期であり、自然界のさまざまな生物が活動を活発化させる重要な季節です。
- 蛙始鳴(かえるはじめてなく)
- 読み方:かえるはじめてなく
- 時期:立夏の始め頃(5月5日頃〜)
- 意味:カエルが鳴き始める時期を示します。これは、初夏の到来と自然界の活動が活発になることを象徴しています。
- 蚯蚓出(きゅういんいずる)
- 読み方:きゅういんいずる
- 時期:立夏の中頃(5月10日頃〜)
- 意味:ミミズが土の中から地上に出てくる時期を指します。雨が多くなる初夏の特徴を反映しており、土壌の肥沃さを示しています。
- 竹笋生(ちくかんしょうず)
- 読み方:ちくかんしょうず
- 時期:立夏の終わり頃(5月15日頃〜)
- 意味:竹の新芽、竹の子が成長を始める時期を表します。この時期は、自然の恵みが豊かになり、新鮮な食材が楽しめる季節の変わり目を意味しています。
小満
小満の期間は、自然の成長と豊かさが顕著になる時期であり、初夏の穏やかな気候とともに、自然界の恵みを感じることができる季節です。
- 蚕起食桑(かいこおこってくわをくらう)
- 読み方:かいこおこってくわをくらう
- 時期:小満の始め頃(5月21日頃〜)
- 意味:蚕が桑の葉を食べ始める時期を指します。絹糸の生産に重要な時期であり、自然と人の営みが密接に関わる季節を表しています。
- 紅花栄(こうさかう)
- 読み方:こうさかう
- 時期:小満の中頃(5月26日頃〜)
- 意味:ベニバナが美しく咲き誇る時期を示します。色鮮やかな花が自然界に彩りを添え、初夏の暖かさを感じさせます。
- 麦秋至(ばくしゅういたる)
- 読み方:ばくしゅういたる
- 時期:小満の終わり頃(5月31日頃〜)
- 意味:麦の収穫時期が到来することを表します。農作物の成熟を象徴し、一年の農業サイクルにおける重要な段階です。
芒種
芒種の期間は、初夏の自然がさらに成長し、多様な生物活動が見られる季節です。この時期は、自然の恵みが豊かになり、農作物の成長も盛んになります。
- 蟷螂生(とうろうしょうず)
- 読み方:とうろうしょうず
- 時期:芒種の始め頃(6月6日頃〜)
- 意味:カマキリが生まれる時期を指します。初夏の自然界における新たな生命の誕生を象徴しており、生態系の継続を示唆しています。
- 腐草為螢(ふそうほたるとなる)
- 読み方:ふそうほたるとなる
- 時期:芒種の中頃(6月11日頃〜)
- 意味:腐った草からホタルが現れる時期を表します。自然のサイクルにおける有機物の分解と新しい生命の誕生を感じさせる現象です。
- 梅子黄(うめのみきなり)
- 読み方:うめのみきなり
- 時期:芒種の終わり頃(6月16日頃〜)
- 意味:梅の実が黄色く熟し始める時期を指します。初夏の果実の成熟を象徴し、旬の味覚を楽しむ時期の到来を告げています。
夏至
夏至の期間は、一年で最も日照時間が長い時期であり、自然界の活動が最も活発になる季節です。この時期は、植物の生長や夏の訪れを感じることができる重要な季節となります。
- 乃東枯(ないとうかるる)
- 読み方:ないとうかるる
- 時期:夏至の始め頃(6月21日頃〜)
- 意味:ウツボグサ(乃東)などの草が枯れ始める時期を指します。夏の深まりを示し、自然の生命サイクルの一部を反映しています。
- 菖蒲華(あやめはなさく)
- 読み方:あやめはなさく
- 時期:夏至の中頃(6月27日頃〜)
- 意味:アヤメや菖蒲の花が咲き誇る時期を表します。初夏の美しい景色を提供し、季節の彩りを加えています。
- 半夏生(はんげしょうず)
- 読み方:はんげしょうず
- 時期:夏至の終わり頃(7月2日頃〜)
- 意味:半夏(はんげ)と呼ばれる植物が生育する時期です。梅雨の終わりと初夏の終わりを象徴し、自然界の変化を示しています。
小暑
小暑の期間は、本格的な夏の暑さが訪れる前の、暑さが徐々に増していく時期です。この時期は、夏の盛りに向けて自然界の変化が顕著になる季節となります。
- 温風至(おんぷういたる)
- 読み方:おんぷういたる
- 時期:小暑の始め頃(7月7日頃〜)
- 意味:暖かい風が吹き始める時期を示します。夏の暑さが徐々に高まり、季節の変化が感じられる時期です。
- 蓮始華(はすはじめてはなさく)
- 読み方:はすはじめてはなさく
- 時期:小暑の中頃(7月12日頃〜)
- 意味:蓮の花が開花し始める時期を指します。蓮は夏の代表的な花であり、水辺の風景を美しく彩ります。
- 鷹乃学習(たかすなわちがくしゅうす)
- 読み方:たかすなわちがくしゅうす
- 時期:小暑の終わり頃(7月17日頃〜)
- 意味:鷹が飛ぶ練習を始める時期を表します。鷹の成長と飛翔の始まりは、自然界の生物たちが夏の活動を展開していることを示しています。
大暑
大暑の期間は、一年の中で最も暑い時期を迎え、自然界のさまざまな生物活動が最高潮に達します。この時期は、夏のピークを象徴し、季節の変わり目を感じるのに適した季節です。
- 桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)
- 読み方:きりはじめてはなをむすぶ
- 時期:大暑の始め頃(7月23日頃〜)
- 意味:桐の木が花を結び始める時期を指します。夏の深まりを象徴し、植物の成長が進む季節を示しています。
- 土潤溽暑(つちうるおいてむしあつし)
- 読み方:つちうるおいてむしあつし
- 時期:大暑の中頃(7月28日頃〜)
- 意味:土が湿り、蒸し暑さが増す時期を表します。最も暑い季節の到来を感じさせ、自然界の活動が最も盛んになる時期です。
- 大雨時行(たいうときどきおこなう)
- 読み方:たいうときどきおこなう
- 時期:大暑の終わり頃(8月2日頃〜)
- 意味:大雨が時折降る時期を指します。夏の盛りにおける気候の変動を示し、自然の力強さを感じさせる時期です。
立秋
立秋の期間は、暑さが和らぎ、秋の気配が少しずつ感じられる時期です。自然界では、夏の終わりを告げる兆しや秋の始まりのサインが現れ始めます。
- 涼風至(りょうふういたる)
- 読み方:りょうふういたる
- 時期:立秋の始め頃(8月7日頃〜)
- 意味:涼しい風が吹き始める時期を示します。これは、暑い夏から秋への移り変わりを感じさせ、季節の変化を象徴しています。
- 寒蝉鳴(かんせんなく)
- 読み方:かんせんなく
- 時期:立秋の中頃(8月13日頃〜)
- 意味:ヒグラシなどの寒蝉が鳴き始める時期を指します。夏の終わりと秋の訪れを告げる自然の声です。
- 蒙霧升降(ふかききりまとう)
- 読み方:ふかききりまとう
- 時期:立秋の終わり頃(8月18日頃〜)
- 意味:濃い霧が立ち込める時期を表します。朝晩の冷え込みが始まり、秋の深まりを感じさせる風景です。
処暑
処暑の期間は、夏の暑さから秋の涼しさへと移行する季節の変わり目であり、自然界の多くの変化が観察できる時期です。
- 綿柎開(めんぴひらく)
- 読み方:めんぴひらく
- 時期:処暑の始め頃(8月23日頃〜)
- 意味:ワタの花が開く時期を示します。夏の終わりに向けて、自然界の生物が次の季節への移行を始めることを象徴しています。
- 天地始粛(てんちはじめてしゅくす)
- 読み方:てんちはじめてしゅくす
- 時期:処暑の中頃(8月28日頃〜)
- 意味:暑さが和らぎ始め、穏やかな秋が訪れることを表します。季節の変わり目に自然界が静かになる様子を示しています。
- 禾乃登(こくものすなわちのぼる)
- 読み方:こくものすなわちのぼる
- 時期:処暑の終わり頃(9月2日頃〜)
- 意味:穀物が実り、収穫の季節が始まる時期を指します。農作物の成熟を示し、一年の農業サイクルにおける重要な段階です。
白露
白露の期間は、秋の涼しさが徐々に増し、自然界が秋の装いに変わる時期です。この季節は、自然界の微妙な変化を感じ取るのに適した時期となります。
- 草露白(そうろしろし)
- 読み方:そうろしろし
- 時期:白露の始め頃(9月8日頃〜)
- 意味:朝晩に草に白い露が降りる時期を示します。秋の訪れを感じさせる、涼しさが増す季節の変化を象徴しています。
- 鶺鴒鳴(せきれいなく)
- 読み方:せきれいなく
- 時期:白露の中頃(9月13日頃〜)
- 意味:セキレイが鳴き始める時期を指します。秋の野原を彩る鳥の声が、季節の深まりを告げています。
- 玄鳥去(げんちょうさる)
- 読み方:げんちょうさる
- 時期:白露の終わり頃(9月18日頃〜)
- 意味:ツバメなどの渡り鳥が南へと去っていく時期を表します。夏の終わりと秋の到来を示す自然界の変化です。
秋分
秋分の期間は、日と夜の長さがほぼ等しくなる時期で、秋の平穏と自然界の変化が顕著になります。季節の移り変わりを感じるのに適した時期です。
- 雷乃収声(らいすなわちこえをおさむ)
- 読み方:らいすなわちこえをおさむ
- 時期:秋分の始め頃(9月23日頃〜)
- 意味:雷が鳴り止み、静かな秋が訪れる時期を示します。夏の終わりと秋の静けさが深まることを象徴しています。
- 蟄虫坏戸(ちっちゅうこをはいす)
- 読み方:ちっちゅうこをはいす
- 時期:秋分の中頃(9月28日頃〜)
- 意味:虫たちが土の中に隠れる時期を指します。秋が深まり、自然界の生き物たちが冬に備え始める季節の変化です。
- 水始涸(みずはじめてかる)
- 読み方:みずはじめてかる
- 時期:秋分の終わり頃(10月3日頃〜)
- 意味:水辺の水が減り始め、乾き始める時期を表します。秋の進行とともに自然界が次の季節へと移り変わることを示しています。
寒露
寒露の期間は、秋が深まり、朝晩の冷え込みが増す時期です。自然界の生物たちも季節の変化に合わせて行動を変え、秋の情緒が高まる季節となります。
- 鴻雁来(こうがんきたる)
- 読み方:こうがんきたる
- 時期:寒露の始め頃(10月8日頃〜)
- 意味:ガンが渡来する時期を示します。これは秋の深まりを感じさせる兆しであり、季節の移行を象徴しています。
- 菊花開(きくはなひらく)
- 読み方:きくはなひらく
- 時期:寒露の中頃(10月13日頃〜)
- 意味:菊の花が開花する時期を指します。菊は秋の代表的な花であり、秋の風情を感じさせる季節の象徴です。
- 蟋蟀在戸(しっそくこにあり)
- 読み方:しっそくこにあり
- 時期:寒露の終わり頃(10月18日頃〜)
- 意味:キリギリスが家の中で鳴くようになる時期を表します。秋の夜長を感じさせる、自然界の一幕です。
霜降
霜降の期間は、秋の終わりから冬の始まりにかけての季節の変わり目です。この時期は、自然界の色彩が変化し、一年で最も美しい景色を提供する季節となります。
- 霜始降(しもはじめてふる)
- 読み方:しもはじめてふる
- 時期:霜降の始め頃(10月23日頃〜)
- 意味:霜が降り始める時期を示します。これは秋の深まりを感じさせ、冬の訪れが近づいていることを象徴しています。
- 霎時施(しぐれときどきほどこす)
- 読み方:しぐれときどきほどこす
- 時期:霜降の中頃(10月28日頃〜)
- 意味:小雨が降ることが多くなる時期を指します。秋の終わりを告げ、しっとりとした風情を感じさせる季節です。
- 楓蔦黄(ふうちょうきなる)
- 読み方:ふうちょうきなる
- 時期:霜降の終わり頃(11月2日頃〜)
- 意味:モミジやツタの葉が黄色く紅葉する時期を表します。秋の風情が最も豊かになる時期であり、季節の美しさを感じることができます。
立冬
立冬の期間は、秋から冬への移行期であり、自然界の変化が顕著になる時期です。この季節は、新たな季節の始まりを感じさせる重要な時期となります。
- 山茶始開(つばきはじめてひらく)
- 読み方:つばきはじめてひらく
- 時期:立冬の始め頃(11月7日頃〜)
- 意味:サザンカやツバキの花が開花し始める時期を示します。これは、初冬に花を咲かせる植物の美しさを象徴し、冬の訪れを感じさせます。
- 地始凍(ちはじめてこおる)
- 読み方:ちはじめてこおる
- 時期:立冬の中頃(11月12日頃〜)
- 意味:地面が凍り始める時期を指します。冬の寒さが深まり、自然界が冬の装いに変わることを示しています。
- 金盞香(きんせんかさく)
- 読み方:きんせんかさく
- 時期:立冬の終わり頃(11月17日頃〜)
- 意味:スイセン(金盞香)が咲き始める時期を表します。冬の花として、寒い季節にも自然の美しさが存在することを示しています。
小雪
小雪の期間は、冬の訪れを感じさせる季節で、自然界では多くの植物が冬支度を進めています。この時期は、年の瀬に向けて静かに進む季節の変化を感じることができます。
- 虹蔵不見(にじかくれてみえず)
- 読み方:にじかくれてみえず
- 時期:小雪の始め頃(11月22日頃〜)
- 意味:この時期には虹がほとんど見られなくなることを示します。天気が冬型になり、空の様子も冬らしく変わっていくことを象徴しています。
- 朔風払葉(さくふうはをはらふ)
- 読み方:さくふうはをはらふ
- 時期:小雪の中頃(11月28日頃〜)
- 意味:北風が強く吹き、木々の葉を払う時期を指します。季節の進行とともに木々が葉を落とし、冬の訪れを感じさせます。
- 橘始黄(たちばなはじめてきなり)
- 読み方:たちばなはじめてきなり
- 時期:小雪の終わり頃(12月3日頃〜)
- 意味:タチバナ(橘)の実が黄色く熟し始める時期を表します。冬の始まりを告げるとともに、寒さの中で色づく果実の美しさを象徴しています。
大雪
大雪の期間は、冬の寒さが最も厳しくなる時期であり、自然界も冬の訪れに適応する様々な変化が見られます。この季節は、冬の静けさと自然の息吹を感じるのに適した時期です。
- 閉塞成冬(へいそくしてふゆとなる)
- 読み方:へいそくしてふゆとなる
- 時期:大雪の始め頃(12月7日頃〜)
- 意味:寒さで大地が閉ざされ、真冬の気候が始まる時期を示します。この時期は、冬が本格的に訪れることを意味しています。
- 熊蟄穴(くまあなにちっす)
- 読み方:くまあなにちっす
- 時期:大雪の中頃(12月12日頃〜)
- 意味:熊が冬眠のために穴に篭る時期を指します。自然界の生き物が冬の厳しい環境に適応する様子を反映しています。
- 厥魚群(けつぎょむらがる)
- 読み方:けつぎょむらがる
- 時期:大雪の終わり頃(12月16日頃〜)
- 意味:鮭が群がって川を上る様子を表します。冬の川の生態系における重要な現象であり、自然界の周期的なサイクルを示しています。
冬至
冬至の期間は、一年で最も日照時間が短く、冬が最も深まる時期です。この季節は、自然界の持続と変化を感じるのに適した時期となります。
- 乃東生(ないとうしょうず)
- 読み方:ないとうしょうず
- 時期:冬至の始め頃(12月22日頃〜)
- 意味:ウツボグサ(乃東)などが芽を出す時期を指します。冬の中でも生命の息吹が存在することを示しており、自然の生命力の強さを感じさせます。
- 麋角解(びかくげす)
- 読み方:びかくげす
- 時期:冬至の中頃(12月27日頃〜)
- 意味:シカが角を落とし始める時期を表します。これは自然界の生物が冬の環境に適応し、新たなサイクルに入ることを象徴しています。
- 雪下出麦(せつかむぎをいだす)
- 読み方:せつかむぎをいだす
- 時期:冬至の終わり頃(1月1日頃〜)
- 意味:雪の下で麦が芽を出し始める時期を指します。寒さの中でも農作物が成長を続けていることを示し、自然界の持続的な活動を感じさせます。
小寒
小寒の期間は、冬の終わりに向けての変化が始まる時期であり、自然界のさまざまな生物が次の季節への準備を始める季節です。
- 芹乃栄(せりすなわちさかう)
- 読み方:せりすなわちさかう
- 時期:小寒の始め頃(1月6日頃〜)
- 意味:セリがよく育つ時期を示します。寒い季節にも強い生命力を持つセリが栄えることは、冬の厳しい環境の中での自然の生き抜く力を象徴しています。
- 水泉動(すいせんうごく)
- 読み方:すいせんうごく
- 時期:小寒の中頃(1月10日頃〜)
- 意味:凍っていた泉や水源が動き始める時期を指します。この現象は、冬の寒さが緩み始めることを示し、自然界の循環と変化を感じさせます。
- 雉始雊(きじはじめてなく)
- 読み方:きじはじめてなく
- 時期:小寒の終わり頃(1月15日頃〜)
- 意味:キジが鳴き始める時期を表します。キジの鳴き声は、冬の終わりと春の訪れを告げる自然界のサインとなります。
大寒
大寒の期間は、一年で最も寒い時期であり、自然界も冬のピークを迎えます。この時期は、次の季節、春への準備が始まる重要な時期となります。
- 款冬華(かんとうはなさく)
- 読み方:かんとうはなさく
- 時期:大寒の始め頃(1月20日頃〜)
- 意味:フキノトウ(款冬)の花が咲き始める時期を示します。冬の最も寒い時期にも芽吹くこの植物は、厳しい冬の中でも生命が息づいていることを象徴しています。
- 水沢腹堅(さわみずこおりつめる)
- 読み方:さわみずこおりつめる
- 時期:大寒の中頃(1月25日頃〜)
- 意味:沢や水たまりの氷が最も厚くなる時期を指します。冬の寒さが極まることを示し、自然界の冬の深まりを感じさせます。
- 鶏始乳(にわとりはじめてにゅうす)
- 読み方:にわとりはじめてにゅうす
- 時期:大寒の終わり頃(1月30日頃〜)
- 意味:ニワトリが卵を産み始める時期を表します。これは、冬の終わりに向けての生命の再生と活動の再開を示唆しています。
これが全体の概要になります。それぞれの節気と候は、自然の周期的な変化を詳細に記述し、季節の移り変わりを感じさせます。
まとめ
七十二候は、二十四節気と同様に季節を示す用語です。
動植物の活動や自然の変化が詳細に記載されており、これにより過去の人々は季節の変化を理解していました。
現代では、七十二候に触れる機会は少ないかもしれませんが、季節の移り変わりを感じたいときに調べてみると、その時期特有の変化を言葉を通じて体感できるため、とても興味深いです。